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駅は、通常、もっとも重要なTG(※1)です。
なぜなら、鉄道交通の発達した大都市では、駅ほど多くの老若男女が利用し行き交う場所・地点はないからです。しかも、それは早朝から深夜まで続きます。ですから、駅の近くに新しい物件が公開されると出店希望者が大勢競って借りようとします。そのため、賃料はつり上がり、なかなか誰もが手の届かない額になってしまいます。
このように人気のある「駅」ですが、今回は、注意すべきことを挙げます。

地下鉄の駅
地下鉄の出入り口は、地上を走る鉄道よりも、多数設けられています。例えば、地上が交差点になっているような場合、4か所以上はあります。
つまり、それだけ人々は分散してしまうのです。それだけではありません。多くの出入り口があるため、人々は自分にとって一番都合の良い出入口を利用するため、複数の出入り口の間は駅の恩恵をほとんど受けないと思ってください。例えば、普通の自動車道路の下に鉄道駅がり、4か所に出入口(A~D)が設けられていたとします(図1)。すると、地上のA-B間、C-D間は最悪の立地になります。なぜなら、アの地域の人は、たいていは出入口のAを使うでしょう。わざわざBにまで行く必要がありません。同様にして、イの人はBを、ウの人はC、エの人はDになります。A-B間やC-D間は駅利用者とは関係ない人が通るだけで、駅の恩恵は受けないことになります。もし、あなたの店がこれに該当する立地にある場合は、A出入口、B出入口の両方で販促チラシを配るべきです。多少の遠回りならお客様は来店してくれるものです。

駅前ロータリー
実は、これは曲者です。人々の動きやロータリーの構造をよく観察しないと見抜けないことが多いからです。図2のどちらが良いでしょうか?AやBにとって、人々が回り道してくれる①のほうが、間を突っ切ってしまう②より格段に良いことは明白です。①の典型例は東京、中央線国立駅の南口です(写真1)。駅ロータリーの両側が駅の影響を受ける立地です。
これに対して、②の突切りタイプの駅ロータリーが、同、京王線北野駅です。楕円で示した立地は、「駅からは良く見える」ので、一見しただけでは見破れません。だから、観察が必要なのです。すると、そこは滅多に人が歩いていない事がわかるでしょう。視界性は良好でも、到達容易性がだめな立地は難しい立地です。

通勤通学がメインの駅
駅とはいえ、まだ出来て間もないものも多くあります。しかし、「駅乗降数26,000人ありますよ」と言われたら、あなたはどうします?
都内でも、乗降数が1万人を越えたらけっこう賑わう駅が多いのですが、この数に気をとられてはいけません。
たとえば、西武池袋線の「新狭山ヶ丘駅」。2012年は26,023人の乗降数があって、これは、西武鉄道全92駅中39位ですから、ほぼ中間くらいの規模であることがわかります(※2)。
しかし、この駅ロータリーのバス運行本数を調べると1路線で1日5本だけです。バスの便が悪いので、駅利用者のほとんどは自家用車や自転車で駅まで来ていると考えられます。昼間に観察すれば乗降者はほとんどいませんので(写真3)、ここの26000人は通勤・通学者にほぼ限られいることがわかります。
通勤・通学時の心理的制約は大きく、商売には向いていないのです。

駅の影響はどこまで
駅前が立地として良いのは、どこまでか。
通常、駅から数え始めて3番目の交差点までと言えます。これは、図3の通りです。それは、駅の乗降者のうちどの程度までが来てくれているかを考えると容易にわかります。まず、駅①の東口利用者が1/2になります。交差点②でそれが1/3に分かれ、③を過ぎるとさらに1/3になってしまいます。
つまり、3番目の交差点を過ぎると、(1/2)*(1/3)*(1/3)=1/18で 5%になってしまいます。5%と言えば、ほとんど影響がないと言って良いでしょう。
では仮に、あなたの店が3番目と4番目間に立地しているとしましょう。
立地として絶望的でしょうか?
とんでもない。あなたは3番目の交差点で別れて歩いていく人々に、販促チラシを間断なく配り続けることです。
よく駅まで行ってチラシを配っている人を見かけますが、駅まで行ってはだまです。よほど大きな魅力がない限り来てはくれませんし、効率も格段に落ちるのです。人々は、「ほんの少し」なら行動を変化させてくれるものです。だから、3番目の交差点で撒くのです。
駅であぐらをかくなかれ
駅前は好立地であることが多いのですが、それにあぐらをかいて、営業の水準を落としてしまうことがよくあります。「駅前なのになぜガラガラなの?」と不思議に思ったことはありませんか?最初は少しぐらい水準を落としてもお客様は誰も気づかないかもしれません。しかし、日常化してしまうとある日突然お客様がピタッと来なくなるものです。そんなことにならないよう好立地の店を任せられている店長は気を付けてください。

※1 TG ティージー TrafficGenerator交通発生源

※2 出典ウィキペディア

図は、株式会社アールアイシー発行 月刊飲食店経営 2017年3月号 を参照のこと